15代目の日記

デリヘル嬢の写メ日記的なやつ

空からエロが降ってくる

人生の転機ってありますよね。私の場合は、小学三年生の夏でした。

まだ世間が空から降ってくるらしい恐怖の大王に怯えていたあの頃、近所にあったパンプキンという名前のコンビニが消えて、同じ場所に新しくオープンしたセブンイレブンに私は親友のエハラ君とよくジュースやお菓子を買いに来ていた。私の実家は理容室で、両親に練習用のマネキンとして自分の頭を差し出せば無限にお小遣いが手に入るという増殖バグがあったため、ただのプレーン黒髪頭がパツ金ジャンボ尾崎ヘアになる頃には、マジックテープのお財布がはち切れるほどの巨万の富を築き、友達にお菓子を奢るなんてことも珍しくなかった。

その日もエハラ君にアイスを奢る流れになった。初めの頃は誰にでも無条件で奢っていた私だったが、この頃には見返りとしておもちゃやポケモンカードを要求する成金襟足長クソガキとなっていた私は、親友のエハラ君にも対価を要求した。少し悩んでエハラ君が口を開いた。

「『アダルト』って知ってるか?」

アダルト。初めて耳にするその意味も知らない言葉に、全身の細胞一つ一つが熱くなるような感覚を覚えた。空気階段の踊り場でやっていた『私、介入されました』のコーナーのように、私もこの日何者かの介入によって、未来を大きく捻じ曲げられたと疑っている。そのくらい強烈な思い出として記憶に残っている。

見事アイスをゲットしたエハラ君に連れられ、その【アダルト】とやらが待つエハラ君の家へと向かった。いつもの子供部屋ではなくリビングに導かれると、エハラ君はテレビの電源を入れてリモコンを操作し始めた。ボタンがいっぱい付いている衛星放送用のリモコンだ。エハラ君の家には、当時ではまだ珍しかったスカパーがあった。しきりにザッピングされていくテレビ画面を見つめていると、それは突然映し出された。

楽しそうに股間をぶつけ合う裸の男と女。なぜか股間の周りがキラキラしている。これが【アダルト】か。後にそれは、スカパーのアダルト専門チャンネルに回すと数秒間だけお試しで見れる映像だと知ることになる。

初めて触れるアダルトというものに当時の私は、心の琴線をぶん殴られたような衝撃、とはならず、「なんだかよく分からない」という印象しか残らなかった。この頃の私には、裸の男女が股間をぶつけ合っている映像なんかよりも、ファービー人形をバグらせて遊ぶ方が死ぬほど楽しかった。

しばらくして私は転校した。それと同時にエハラ君とも疎遠になり、アダルトの記憶もどこかへ消えてしまった。

少し時が流れて、私の頭がベッカムヘアになっていた頃。ある日、学校から帰ると、父親がリビングでテレビを見ていた。ボタンがいっぱい付いたリモコンをいじりながら自慢げに父親が口を開いた。

「これでカートゥーンネットワークが見れるぞ」

我が家にスカパーがやってきたのだ。続く。

AV監督になるまで、あと6666日。ぐらい。